2017年1月のNAMM SHOWにて発表させて頂いてからブラッシュアップを続けておりますWHITE FACEクリーンプリアンプにつきまして、お問い合わせを頂く機会が増えてまいりましたので、開発の進捗状況をお伝えしたいと思います。
元々クリーンのプリアンプを作りたいという希望は以前からあり、ソリッドステートでの試作は何度か繰り返していました。
なぜクリーンのプリアンプかというと、歪みエフェクターは繋がる先のクリーントーンによってサウンドが大きく左右されるもので、歪みエフェクターをメインに製作させて頂いているメーカーとしては一つリファレンスの様なクリーントーンを提示できれば良いなと思っていたからです。
ソリッドステートでもその役目は果たすことは可能ではあったのですが、それをスタンダードとして打ち出すと思うとどうもしっくりこず、やはり歴史的に真空管アンプのクリーンが広く一般に浸透しているスタンダードであると感じていました。
ですが通常の真空管アンプですと実際にはクリーンな領域が狭すぎたり、コンプレッションが強すぎたり、周波数レンジが狭かったりと、エフェクターの音を余さず再生するのには自分としては十分では無いと感じており、その辺りの再生力が丁度良く、また単体のクリーンとしてもリッチなチューブサウンドのものというのはなかなか少なく、どうしたものかと長く保留にしていました。
そうしているうちにKORG様からNutube 6P1というものが発表されました。2016年、試供品を得られる様になったタイミングで早速簡易な試験機を作り、音と反応を確かめてみましたところ、まさに保留にしていたクリーントーンに最適な部品だと大喜びしました。
そして2016年末にかけて最初の試作機を完成させました。
現在までにプロトタイプは大きな変更点で見ると5バージョンの変遷を辿ってきました。
プロトタイプver.1は音はそこそこなものの、バックグラウンドノイズがひどく(こちらはNutube由来ではありません)、またNutube由来のマイクロフォニックノイズも大きいものでした。
ver.2はバックグラウンドノイズを大幅に減らし、マイクロフォニックノイズもそこそこ低減できたものでした。
このver.2はNAMMに持って行ったバージョンになります。
帰国後、Nutube部分でのコンプレッションを増す作業と、センドリターン部のレベル調整を行いました。
NAMM展示ボードではセンドリターンにfree the tone様のAmbi spaceをインストレベルにて接続しており、すっかりインストレベルに対応できていると思い込んでいたのですが(あとで分かったのですがAmbispaceはマージンが広く取られているようです)、帰国後、他社の空間系製品を色々と繋いでテストしているとどうも音が割れてしまい、インストレベルと言い切るにはもっとレベルを下げる必要があると感じ、改良することにしました。
ver.3はセンドリターン部のレベルを下げるとともに、より真空管的なコンプレッションが得られる様に調整し直したものでした。
ここでまたノイズの問題が発生しました。途中で音量を下げて、また上げるという事をするので、下げた時に乗ったノイズがレベルを大きく戻す際に同じ様に持ち上がってしまい、当たり前といえば当たり前なのですがノイズが増えてしまいました。
この設定で固定にしてしまうと、センドリターン部に何も繋がない、あるいはラインレベル対応のものを使うという場合に、無駄にノイズの多い状態になってしまうため、内部にスイッチを付け、切り替えられる様にしようと思いました。
ver.4はセンドリターンレベルの切り替えスイッチを内部に設け、Nutubeには新たなマイクロフォニックノイズ対策を施しました。
マイクロフォニックノイズは試奏レベルの音量では本体をデコピンしても鳴らないくらいまで低減しました。かなりの大音量下でも通常使用では問題にならない程度(レバースイッチ切り替え時にかすかになる程度)になっています。
サウンドの面ではチューブ感を出し過ぎてきてしまっており、歪みエフェクターと合わせるとやや団子になってしまう様に思えたので一度原点に戻りスッキリした状態にしようと思いました。
ver.5はサウンドメッセ大阪2017に持って行ったバージョンで、サウンドもスッキリとしたものに戻った事で、イメージとしては諸々の問題を解決済のver.2といった感じになりました。
しかしここでまた問題が発生しました。サウンドメッセにて気が付いたことなのですが、その時のアンプがtwo rockのアンプで、リターンに直にギターを接続してもとても良い音、というかリターンなのにちゃんとギターアンプの音がしていて、その様な状態にプリアンプを接続すると近似的にダブルプリの様な状態になり、音が薄くなってしまいました。
それまでテストしていたアンプのリターンやパワーアンプでは元の音はモコモコしていてプリアンプを繋がなければギターらしい音では無かったのですが、two rockまで来るとリターン直でも良い音がしてしまうということがわかりました。
この現象に対応する為、メッセ後ver.6の叩き台にすべくver.5を改造しました。
EQのポイントを再設定し調整でどちらのタイプの接続先でも追い切れる様に、また全体のサウンドも要点を充実させる方向にレンジ感とコンプレッションのバランスをとりながら進めて行きました。
その途中、さらにノイズを低減できる余地を発見し、よりローノイズ化しました。
そして現在ver.6の基板を発注し出来上がるのを待っている状態です。
ver.5でファイナルバージョンと思っていた為、大量のver.5基板を作ってしまいました…
しかしさらに良い物にする為、ver.6に進む事を決断しました。
大変お待たせしておりまして心苦しいのですが、お届けするバージョンは現時点の自分の実力で最高の物をお出ししたいと思っておりますので今しばらくお待ち頂ければと思います!